2012/06/17

【14】Ridley Scottのモンスターたち

ハイレベルの活劇映画を作り続ける現在最高の職人的監督リドリー・スコット。
C・イーストウッドも感動のドラマを生み続けてるし、D・フィンチャーも素晴らしいサスペンスを
次々つくっている。けど感動の歴史ドラマからハードSFまでを網羅しつつも
けして質を落とさないのは、映画以前に手がけたCF本数が1900本以上というキャリアにおいて
絵コンテ、フィルム、レンズ、照明等、映像制作のすべての作業を熟知しているから。
深い知識を元に細部から構築する完全主義がたたりスタジオとの対立やトラブルも多かった…
と我らが黒澤明を思い出させる。たしかに作風も似てるね。
03年にはナイトの称号を授与されてるので正式にはサー・リドリー・スコット!




【デュエリスト】
R・スコットの活劇にはなにか得体のしれない嫌〜なパワーを持ったモンスターがよくでてくる。
ねちっこく執拗につきまとい因縁つけては対決を強要してくるこの役に名優ハーベイ・カイテル。
映画監督デビュー作なのに美しい陰影の画面からは古典のような気品が漂っていた。






【エイリアン】
説明不要SF映画名作中の名作。
スピルバーグが宇宙までもファンタジー化してSFの新しい雛形をつくったのに対し、
R・スコットはより深い闇の宇宙を観せてそれまでにない雛形をクリエイトした。
これを劇場で観た時にはクライマックスの緊迫感に耐え切れずに
シートの下にもぐりこみそうになりました。
何という造形!何という闇の美学!



この異常なエイリアン造形を生みだしたのは、
爽やかなはずのスイスが生んだ異常な画家H・R・ギーガーの一連の作品。
エイリアンのあのへんてこな頭はチ●コの形からきてるらしい…
とにかく画期的でした。爽やかじゃないのかスイス?








【ブレードランナー】
これも説明不要の古典SF。
原作も説明不要のP・K・ディック。映画化された数はS・キングとどっちが多いんだろ?
高い知能を持つゆえ存在意義に苦しむ人工生命体の反乱。
そのリーダー役のルトガー・ハウアーのとてつもないクールなかっこよさと哀しさ。
うつくしきモンスターNO.1





【ブラックレイン】
この作品で素晴らしく不気味なモンスターを演じたのがかの松田優作。
この後すぐに他界したのはつくづく悔やまれる。
健在だったら間違いなくKen・Watanabe並になってたろうに…。
けどもったいないことにラストではモンスターじゃなくて只の犯罪者扱いになってる。
主演のM・ダグラスを立てるためとしか思えないが、それほどにも優作は際立っていた。






【グラディエーター】
天下の活劇映画。アカデミー賞も総なめ。R・スコット美学一つの到達点。
プロダクションデザインの絢爛さ、ドラマの奥深さ、
そしてこれ以降多数のコラボレーションをすることになる主演のラッセル・クロウの素晴らしさ、
どれをとっても見応えあり。
で、モンスターはというとイジけて歪んでひん曲がったココロで実父をも殺めるこの暴君。
演ずるはホアキン・フェニックス。いいね〜この病んだお目々。
ラッセルの男気がキランキラン輝くのもこの病んだ眼が対極にあってのこと。





【ハンニバル】
アカデミー総なめにした前作『羊たちの沈黙』を撮ったのはやはり職人的監督ジョナサン・デミ。
この映画史上悪キャラ人気No.1のレクター博士も監督が変われば雰囲気が変わる。
『羊〜』では物静かな狂気を振りまいていたハンニバル・レクター、
こちらではちょっとマッチョで早業な殺人芸術でゲイリー・オールドマン、レイ・リオッタら
名だたる悪役俳優たちを手玉に取り、全くもってとんでもない目にあわせる。
演ずるは言わずと知れた名優アンソニー・ホプキンス。こわっ。
かつてテレビ朝日で地上波放送されたそうだが、クライマックス問題のシーンをふくめ
沢山のヤバいシーンがカットされたそうだ。
だったら放送すんなよ!と言いたいが、そうまでしても放送したいカネになるヒット作ってことか。








【ブラックホークダウン】
1993年、ソマリアで実際に起こった米軍を中心とした多国籍軍とゲリラによる壮絶な市街戦。
この市街戦戦闘シーンの異常なリアルさは描かれた時代が近いこともあり
スピルバーグの『プライベートライアン』以上。
リドリー・スコットはたぶん戦争というものを
得体のしれないパワーを持ったモンスターとして描きたかったのではないかと思う。
このモンスターの前ではヒーロー気取りの精鋭米兵たちもゴミ屑のように死んでゆく。
リアルに描かれるほどにこの人間がつくった戦争というモンスターの無意味さが際立つことを
監督はよく知っている。そのためのハイテク映像技術。
スピさんプロデュースのトランスなんたらとは真逆のハイテク活用術。







【ワールド・オブ・ライズ】
元々は自分らが育て上げたアルカイダなどのテロと戦う米国CIA。
ヨルダンなどの中東をかけずり回る現地局員ディカプリオと
豊かなアメリカから強引な指示を無線で与える上司を
体重を20kg増やして演じたラッセル・クロウ。
テロ活動が爆発して戦争の形体が大きく変わったこの世界、
いったい何が悪なのかさっぱりわからないこの世界。
二重三重の策謀が重なりあう諜報世界そのものがモンスターのようにもみえる。
にしても現実の諜報活動で使用されてるんであろう米のハイテクノロジーに驚かされる。








【プロメテウス】
かつて活劇映画のモンスターはでかい猿とか火を吐くドラゴンなどの単純な反文明存在たちで
誰かが勇気を出してそれを退治すればよかった。それでヒーローも生まれた。
今ではそんな牧歌的な世界は消えてなくなり、この地球上において何がモンスターかって
人類とその文明と言うしかないわけで、困ったリドリーの眼は自ずとまた宇宙の闇へと向かった…
のかどうかは知らないが、超待望の新作はエイリアンの前日譚という当初の企画内容から大きく飛躍し
人類の起源をめぐる壮大な物語へと進化…だとか。さすがリドリー!
映画作家とは映画をつくることで人間と世界を解明しようとする。
現在の地球と人類、このタイミングで人類の起源を描くリドリー・スコットは
ネタ切れでプレデターとエイリアンぶつける三流どもとははっきり違う。
ホントの活劇をつくろうとしているのだ。
 
いよいよ今夏公開。
このホンモノ感…出来ればアイマックスシアター貸し切って独りで観たい。



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